病理診断を知っていますか
中央検査室
病理診断とは
患者さんの体より採取された病変の組織や細胞から顕微鏡用のガラス標本(※)をつくり、この標本を観察して診断するのが「病理診断」です。治療を行なうための最終診断において大きな役割を果たします。
病理診断と呼ばれるものには組織診断・細胞診断・病理解剖があります。
組織診断(組織診)
組織診断は内視鏡検査や手術などで取り出した組織や臓器が対象となります。それらから臨床検査技師がガラス標本を作製、病理医がその標本を顕微鏡で観察し診断します。【図1】
どのような病変がどれくらい進行しているか、手術で取りきれたか、追加治療は必要かなど治療方針決定に必要な情報を臨床医に提供します。
近年は病理標本を利用し、病気に関係する遺伝子やホルモンなどを調べ、抗がん剤やホルモン治療の種類を決定するなど、個人個人に適した治療(テーラーメイド治療)に結び付く診断も行なっています。
【図1】
細胞診断(細胞診)
細胞診断は1つ1つの細胞を顕微鏡で観察し、がん細胞がいるかどうか診断します。子宮がん検診や肺がん検診がよく知られています。
自然にでてくる痰や尿に加え、子宮頚部を専用のブラシでこする場合や乳房や甲状腺、リンパ節などしこりがある部分に注射針を刺して採取されたものが材料となります。【図2】
診断は細胞検査士が顕微鏡でスクリーニング (観察)します。当院には4名の細胞検査士が在籍しています。
当院の病理診断実績 (2019年度) 組織診断 1,500件 細胞診断 2,000 |
【図2】
病理解剖
病死された患者さんのご遺体を、ご遺族の承諾を得た上で解剖させていただくのが病理解剖です。
これにより得られた組織で「組織診断」を行ないます。亡くなられた直接の死因はなにか、治療の効果はどうだったのか、判明していない病気はなかったかなどを判断します。病理解剖の結果はすべて日本病理学会に報告され、医学の進歩や発展に役立てられます。病理解剖は個人がなしうる最後の社会貢献ともいえます。
【病理医とは】
この病理診断を専門とする医師が病理医です。病理医は「メスを使わない外科医,聴診器を持たない内
科医」とも言われています。病理医は実際に患者さんの治療にあたる臨床医とは違った角度から病気
の原因を追究し診断します。より的確な診断を行なうために、時には臨床医と熱い議論を交わします。
当院は非常勤の病理医が1名在籍し、迅速かつ正確に診断を行なえるよう日々努めています。必要に応
じてその分野に秀でた専門医にコンサルテーション (相談)を行ない、より専門的で信頼できる診断を
行なっています。
(※)ガラス標本(プレパラート)の作り方
摘出された組織などをホルマリン固定し、脱水などの工程を経てパラフィンと呼ばれる蝋(ロウ)で固めたものを特殊な機械を使用して約1000分の3ミリの厚さにスライスしてガラスに貼り付け、それを染色して作製します。その工程は1日以上かかります。非常に細かい手技のため高度な技術が必要で、熟練した技師が作製しています。