足の「むくみ」や「腫れ」について
心臓血管外科
はじめに
むくみとは体に水がたまり、 体のどこかが膨れた状態になることです。 これとは違って腫れとは血流の増加(充血) または血液成分が血管外に漏れ出ることにより膨れることとされています。医学的にはこのようにとされています。 医学的にはこのように 区別されています。 むくみと腫れとはどちらかはっきり区別出来ることもありますが、 両方同時に起こることもあります。 むくみや腫れは高齢になると比較的見かけることが多い状態ですが、 若い方に見かけることもあり、 また重大な病気が隠れていることもあります。むくみ、 腫れの原因となる疾患は下記のように極めて多数あります。
このように極めて多数の疾患によって下肢のむくみや腫れがおこります。これ以外の疾患が原因のこともあ
ります。容易に治療できるものから治療が簡単ではないものまでいろいろあり、また突然死する可能性のあ
るものや長期的に命に係わるものも含まれます。
下肢のむくみや腫れの改善については治療開始が遅れれば症状が改善しなくなるものもあり、日常生活が
困難になることや、ごくまれに下肢の切断に至ることもあります。もし悪性腫瘍が原因であれば、速やかな
治療開始が望まれます。
足のむくみや腫れは見ただけではどの病気が隠れているのか判断が困難なことも多く、原因を特定するた
めの検査にはこのようなものがあります。
(1)採血 :感染による炎症反応の程度、肝臓や腎臓の機能障害の有無、甲状腺ホルモンの機能低下の
有無、心不全の有無、貧血の有無、悪性リンパ腫の可能性などの検査
(2)エコー: 深部静脈血栓症の有無、下肢静脈瘤の有無、深部静脈の血液逆流の有無
(3)CT検査: 深部静脈血栓症の有無、骨盤内・腹腔内悪性腫瘍の有無、悪性リンパ腫の可能性の判断
注意! これらの検査は医療機関によって出来ることとできないことがあるため、 事前に医院や病院に確認が必要です。 |
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右記検査で下肢のむくみや浮腫の原因がある程度は判断できますが、それだけでは原因が判断できないこ
ともよくあり、原因がはっきりしないまま治療を行わざるを得ないこともあります。主な原因となる可能
性がある病気かどうかを判断するための検査が必要になることもあります。以下の2つの検査を前述の検
査に追加することにより足のむくみ、腫れの原因がかなりの割合で判断できるようになります。
非観血的静脈圧測定
まず、足が腫れないためには基本的には、ふくらはぎの筋肉の中に内蔵されている深部静脈という静脈を
使って足にたまっている静脈血を重力に逆らって心臓に押し返す必要があります。一般的には、前述のエコー
検査で足の静脈に血栓や血液の逆流がなければ足の静脈には問題なしと判断される可能性がありますが、
足の静脈に逆流がないことと、実際に足の静脈が心臓に向かって血液を送り返せているかどうかは別の問題です。実際に血液が足から心臓に向かって送り返された結果、足の静脈の血液の圧力が減ったかどうかを簡単に確認するのがこの非観血的静脈圧測定です。数十年前から足の血液が心臓に送り返されているかどうかを検査する方法はありましたが、検査自体が古く、30分程度時間がかかり、再検査が必要となることもあり、検査を行う病院が少なくなっています。また、この検査では足の血流に直接影響すると思われる静脈圧を直接測定することができません。しかしながら当院で導入している非観血的静脈圧測定器【図1】は世界で初めて当院が開・臨床応用した装置であり、以前の装置ではわからなかった足の静脈圧を痛みもなく、短時間で測定できます。この装置で足の静脈圧を測定し、静脈圧が下がらなければ足の静脈血が心臓に送り返されていない可能性が高くなります。
ICGリンパ管造影
さらに一般的には診断が困難な浮腫の原因の一つとしてリンパ浮腫という病気があります。当院にはICGリンパ管造影検査ができる装置【図2】があり、リンパ浮腫の検査が可能です。リンパ浮腫は治療が難しい病気ですが、徐々に悪化し治療困難となっていくこともあり、極力早期の診断と治療が望ましい疾患です。当院では下肢のむくみや腫れに関して大部分の疾患の診断ができます。また、静脈はもちろん動脈の病気の診断や治療も行っています。下肢静脈瘤がある方に対しての下肢静脈瘤のレーザー治療も数多く行っています。
当院での下肢静脈瘤の治療は術後に静脈瘤が残ることがほとんどなく、術後静脈瘤の再発率が極めて低いことが特徴です。レーザー治療は健康保険が適用され、令和2年度診療報酬改定で以前より治療費が安くなっています。(表1)もし下肢の「むくみ」や「腫れ」が気になるなど不安がある場合は当院心臓血管外科外来にご相談ください。