ロタウイルス胃腸炎について
小児科
今回は冬になると流行する嘔吐下痢症の主な原因であるロタウイルス胃腸炎について触れたいと思います。
冬季嘔吐下痢症の主な原因の一つ
冬に流行する嘔吐下痢症(急性胃腸炎)の原因は多くがウイルスによるもので、ロタウイルスやノロウイルスがその代表です。
乳幼児の胃腸炎の中で最も重症化しやすい
ロタウイルス胃腸炎は、乳幼児の胃腸炎の中では最もひどくなり易いことが知られています。嘔吐や下痢がひどく、水分補給が間に合わないと、急激に脱水が進み、適切な処置をしないと命に関わることもあります。また、ロタウイルスはインフルエンザ、突発性発疹に次ぐ、小児の脳炎・脳症の原因であることが報告されています。
特に0歳・1歳は要注意
ロタウイルス胃腸炎は5歳までに一度は経験すると言われています。体が小さいうちに初めて感染すると重症化しやすく、入院が必要になることがあります。日本ではロタウイルス胃腸炎で入院する小児の3割が0歳児、4割が1歳児です。
症状の特徴
ロタウイルス胃腸炎の症状の特徴は、米のとぎ汁のような白っぽい下痢や激しい嘔吐です。そして他の胃腸炎よりも回復に時間がかかり、症状がおさまるまで1週間程度かかります。
治療は・・・
残念ながら現在ロタウイルスの特効薬はなく、かかってしまったら、経口補水液による水分補給で脱水を防ぎ自然に治っていくのを待つことになります。
嘔吐に対して経口補水液を使用する場合は1回5mlを5分ごとになんども与えることが勧められています。もしも下図のような危険な兆候があるときは速やかに受診してください。
危険信号(Red Flag)
- 見た目に調子が悪そう、もしくはだんだん調子が悪くなる
- ちょっとした刺激に過敏に反応する、反応性に乏しいなどの反応性の変化
- 目が落ちくぼんでくる
- 頻脈
- 多呼吸
- 皮膚緊張(ツルゴール)の低下
- 手足が冷たい、もしくは網状チアノーゼ
- 持続する嘔吐
- 大量の排便
- 糖尿病、腎不全、代謝性疾患などの基礎疾患がある
- 生後2カ月未満
- 生後3カ月未満の乳児の38℃以上の発熱
- 黄色や緑色の胆汁性嘔吐、もしくは血性嘔吐
- 反復する嘔吐の既往
- 間欠的腹痛
- くの字に体を折り曲げる、痛みで泣き叫ぶ、もしくは歩くと響くなどの強い腹痛
- 下腹部痛、特に心窩部・上腹部から右下腹部に移動する痛み
- 血便もしくは黒色便
出典元:「ロタウイルス胃腸炎をご存知ですか?」監修:尾内一信
小児急性胃腸炎診療ガイドライン 日本小児救急医学会
予防のために家庭や園でできること
まずは手洗いをしっかりすることが大切です。便や嘔吐物にはウイルスが含まれ、トイレの便座やドアノブをはじめ、家具やおもちゃ、タオルについたウイルスは条件が合えば10日ほど生きていると言われます。塩素
系漂白剤や哺乳瓶用の消毒液などでしっかり消毒しましょう。
予防が大切・・・でも難しい
ロタウイルスは石鹸や消毒用アルコールに強いので、塩素系漂白剤や哺乳瓶用の消毒液などでしっかり消毒しなければ死滅しません。胃腸炎症状が治まってもしばらくはウイルスが便中に排泄され、わずかな数のウイルスで感染し発症します。ですから、保育園などでひとり感染者が出れば、全員がロタウイルス感染症になってしまうということもあります。
登校(登園)の目安は
症状が出る前や症状が治ったように見えてもウイルスが持続的に排泄されていることがあります。ロタウイルス感染症の30%は下痢が始まって25〜27日後にもウイルスを排泄していたとの報告があるくらいです。下痢が治っても1カ月以上登校(登園)できないとすることは現実的でないので、日本小児科学会では登校(登
園)の目安を「症状のある間が主なウイルスの排泄期間なので、下痢・嘔吐症状が消失した後、全身状態の良いものは登校(登園)可能であるが、手洗いを励行する。」としています。
ワクチンで予防できる
感染力が強く、重症化しやすいロタウイルス胃腸炎ですが、最近はワクチンが開発され、予防できるようになりました。有効性は高く、WHO(世界保健機関)は「世界中の全ての国の予防接種プログラムに導入されるべきである。」とワクチン接種を推奨しています。
接種対象は生後6週から24週までの乳児で、この間に接種を完了することになっています。稀に腸重積を起こすことがあるので、初回投与は14週6 日までに行なうことが推奨されています。残念ながら公費負担がないので自費での接種となります。当院でもワクチン投与可能です。大切なお子さんの未来のために赤ちゃんが生まれたらロタワクチンをプレゼントしませんか。
この記事は2017年10月現在のものです。