大腸がんの治療のお話

外科

消化器内科から大腸がん検診の重要性についての話(病気のお話「大腸がん検診のすすめ」)がありましたが、 今回は大腸がんの治療についてお話します。

はじめに

全がん腫のなかで大腸がんは死亡原因の男性では3位、女性では1位(国立がん研究センターがん対策情報センター、2014年データ)と増加傾向ですが、最近の医療、特に手術技術や抗がん剤の進歩で治療成績は以前に比べて改善しています。つまり、大腸がんは増えてはいますが、はやく見つかれば治る病気になってきました。大腸がんの治療を3つの大きな柱である内視鏡(大腸カメラ)的治療、外科的手術、抗がん剤治療にわけてお話します。

内視鏡的治療

内視鏡的治療は大腸表面の一番浅い粘膜内までか、その下の粘膜下層にとどまるがんが適応になります。隆 起していて根元にくびれ(茎)があるタイプでは金属製の輪を根元にかけて切ります。平坦なタイプは根元に液体を注入して浮き上がらせて切ります。内視鏡的治療では麻酔や手術が要りません。入院は必要ですが、病状に応じて数日です。

内視鏡治療[ポリペクトミー・内視鏡的粘膜切除術(EMR)]

治療法には、ポリペクトミー、内視鏡的粘膜切除術(EMR)、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)があり、がんの形や大きさに応じて使い分けます。

ポリペクトミー、内視鏡的粘膜切除術(EMR)


患者さんのための大腸癌治療ガイドライン【2014年版】より改変


外科的手術

内視鏡的治療が出来ない進行がんが外科的手術の適応になります。外科的手術にはお腹を大きく切開する開腹手術と腹腔鏡(手術用のテレビカメラ)を用いて小さい傷で手術する腹腔鏡手術(鏡視下手術)があります。がんが出来た部位で違いますが、開腹手術も腹腔鏡手術もがんを含めて大腸を十数センチから数十センチ切除し、がんの近くのリンパ節も切除します。これは進行がんの場合はリンパ節に転移がある可能性があるので、リンパ節まで根こそぎ切除してがんを完全に取りきるためです。開腹手術ではお腹を約20センチ切開します。これに対して腹腔鏡手術では数か所の1〜2センチの傷から専用の器具を使って手術します。最終的にがんと周囲の大腸を取り出す時に一か所の傷を5〜6センチに広げますが、腹腔鏡手術は開腹手術に比べて傷が小さいので術後の痛みも軽くて回復が早いです。順調に行けば、術後約10日で退院可能です。また、美容的にも優れており身体に優しい手術だと言えます。当院では以前より腹腔鏡手術に積極的に取り組んでおり、当院の大腸がん手術の約64%が腹腔鏡手術です。(2016年実績)最近は最新の3Dの腹腔鏡手術システムを導入しました。これにより、今まで以上に精緻な手術ができるようになりました。

腹腔鏡手術の様子

腹腔鏡手術の様子

開腹手術後の痕

開腹手術後の痕

腹腔鏡手術の痕

腹腔鏡手術後の痕

抗がん剤治療

抗がん剤治療はその目的から大きく2つに分かれます。進行していて手術では取り切れない切除不能進行がんに対する治療と、手術で肉眼的には切除できたが術後の再発予防目的で行なう補助療法です。それに加えて最近では術前に抗がん剤で進行がんを小さくしてから手術へ持ち込む術前抗がん剤治療も行なわれるようになってきました。抗がん剤には内服薬と注射薬がありますが、その患者さんの体力や病状、目的に合わせて、内服のみ、注射のみまたは内服と注射の組み合わせで治療します。以前の抗がん剤治療は入院して点滴を打ち続けるイメージがありましたが、現在はほとんど外来で通院治療が可能です。当院では抗がん剤治療専門の認定看護師がいる専用の外来化学療法室(特集「がん化学療法について」で紹介)を完備しています。ご高齢で通院での抗がん剤治療に不安がある患者さんに対しては短期入院でも抗がん剤治療をしています。最近の抗がん剤の進歩は目覚ましく、従来の一般的な抗がん剤に加えて分子標的薬と呼ばれるがんをピンポイントで攻撃する新薬も次々に開発されています。抗がん剤治療は高額ですが我が国には優れた医療制度があり、患者さんが支払う治療費の上限は決まっています。ご不明な点が有りましたら、お気軽に担当医にご相談ください。


この記事は2018年1月現在のものです。

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