医療被ばくについて

放射線科

被ばくとは

放射線にばく露する(さらされる)ことを「被ばくする」と言います。原爆や原発事故のニュースの影響で、被ばくする検査は怖い…と思っている方がいるかもしれません。

放射線を使った検査や治療を行って被ばくすることを医療被ばくと言います。レントゲン撮影やCT検査、透視、血管造影等の検査は放射線の一種であるX線を使っており、わずかではありますが被ばくします。
細かく言うと被ばくには 外部被ばく、内部被ばく (※)などの形態の違いもありますが、今回は当院での検査による医療被ばくについて、少し説明したいと思います。


※外部被ばく:X線検査やCT検査など体外からの被ばく
 内部被ばく:呼吸や飲食により体内に取り込まれた放射性物質による被ばく

被ばくの影響

皆さんは、被ばくは怖いという漠然としたイメージを持っていると思います。被ばくが怖いかどうかは被ばくの量で決まります。医療被ばくは主に病気の早期発見や診断の確定等を目的とした検査によるものであり、原爆や原発事故とは決定的に異なるものです。医療被ばくを恐れるあまり適切な検査を受けないでいると病気の発見や診断が遅れるようなことにもなりかねません。
難しい話になりますが、被ばくの影響は確定的影響と確率的影響に分けられます

確定的影響

これ以上被ばくすると影響が生じる、これ以下なら影響が生じないというしきい値が存在するもの。脱毛、皮膚障害、下痢、不妊等があります

確率的影響

しきい値はなく線量の増加に伴って発症率が上昇する。発がんや遺伝的影響があります。

確定的影響と確率的影響のグラフ

確定的影響

検査による被ばく線量は胸部レントゲン撮影では0.1mSv前後、CT検査では撮影部位(頭部、胸部、腹部、全身など)や撮影方法により異なりますが1回あたり約5-30mSv程度と言われています。一般的な医療被ばくの線量はしきい値を超えません。

被ばく線量としきい値の表

確率的影響

原爆被ばく者の追跡調査が主な根拠となっています。ショウジョウバエの実験では被ばくによる遺伝的影響が認められましたがヒトでは確認されていません。
放射線は自然界にも存在しており、日常生活の中でも身のまわりにある放射線を受けています。例えば、東京からニューヨークまで飛行機を利用すると0.11〜0.16mSvの放射線を受けます。また、日本においては1年間の日常生活の中で受ける放射線の線量は平均2.1mSvと言われています。発がんに関しては100mSv以上被ばくするとがん発生のリスクが上昇することがわかっていますが、医療被ばくによる影響よりも喫煙や飲酒、生活習慣からくる発がんリスクの方が高いと言われています。


※放射線の単位について

Sv(シーベルト):放射線が人体に及ぼす影響を表す単位。吸収線量に放射線の種類や人体の組織ごとに
決まった係数を乗じて補正したもの。

被ばく線量の比較(早見図)

小児期の被ばく

小児は大人より余命が長く、発がんする可能性のある期間が長い、検査で被ばくする機会が多いといった特徴があるため、成人と比べるとリスクが高くなります。小児検査の際は体格に応じ線量を減らしています。

まとめ

放射線診療ではわずかな被ばくは起こります。しかし一般的な医療被ばくの線量(100mSv以下)では健康被害を起こす可能性は極めて低いといえます。
検査を行うことにより病気の早期発見や診断の確定、治療効果の確認を行うことができるという有益性があります。むやみな検査はするべきではありませんが、必要な検査については被ばくの不利益より有益性が十分に大きいと考えられることであり、また当然ながら検査の際は被ばくが極力小さくなるように努めています。

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この記事は2022年5月現在のものです。

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