糖尿病黄斑浮腫について
眼科
糖尿病黄斑浮腫とは?
眼の奥には「網膜」という薄い膜があり、ここで視覚の情報を認識しています。(❶)網膜の中心部にある「黄斑」は物の形や色、大きさなどを見分ける特に重要な部分です。(❷)糖尿病黄斑浮腫は糖尿病網膜症の合併症のひとつです。視力に関わる大切な部分である「黄斑」に浮腫(むくみ)が生じて視力低下を引き起こします。
高血糖の状態が続くと、血管が脆くなったり、詰まったりして、血液が運ばれなくなったり、血管の外に血液成分が漏れ出てしまうようになります。その結果、むくみが生じ、視力の低下が起こることがあります。
検査と診断
網膜の状態は、問診、視力検査、眼底検査、光干渉断層計(OCT)などで調べます。
問診
病気の診断や管理、治療のために詳しい症状(いつからどのように生じたか)を聞き取り、これまでにかかった病気や生活習慣などをお聞きします。
視力検査
視力を測り、病気の診断や進行、治療の効果を調べます。
眼底検査
黄斑とその周辺部(眼底)を直接眼底鏡や顕微鏡で観察し、カメラでも撮影します。
光干渉断層計(OCT)
網膜の断面を撮影して黄斑の状態を確認することで、診断や治療法の検討、治療効果の確認をします。
日常生活で気をつけること
糖尿病黄斑浮腫においては、基礎疾患である糖尿病の治療が重要です。また、糖尿病の基本は生活習慣の改善です。
運 動
運動量が減ったり、座っている時間が長くなったりしていませんか?意識して日常生活に運動を取り入れましょう。
食 事
糖尿病の治療で基本とされている食事の摂り方を実践しましょう。
- 栄養バランスのよい食事を規則正しくとる
- 食べ過ぎを避ける
そのうえで、以下に気をつけると良いでしょう。
- 食物繊維(野菜、果物、豆など)、魚を積極的に摂る
- ビタミンDの不足を避ける(魚、卵、 きのこ)
禁 煙
タバコは血糖値を上昇させ、他の合併症のリスクも高めてしまいます。禁煙を心掛けましょう。
ものを見るための細胞(視細胞)は一度ダメージを受けると元に戻ることが難しい組織です。
そのため、ダメージを受ける前の早期から適切に治療を開始し、視力の低下を防ぐことが重要です。
また、症状が改善した場合でも症状に合わせて治療を継続していくことが、視力の維持にもつながります。
糖尿病黄斑浮腫どんな治療をするのか?
治療は血糖と血圧のコントロールをして悪化させないことが大切です。それでも症状が悪化した場合には手術による治療が行われます。
主な治療方法としては、黄斑症がない場合の手術として網膜光凝固療法(レーザー治療)と、黄斑症がある場合の手術として、ステロイドの注射と抗VEGF抗体の注射、硝子体出血の起こった方や重症の場合に行われる硝子体手術があります。
光凝固法
レーザーにより網膜に出現した脆い新生血管(出血の原因になる)の活動性を減らしていくことが治療になります。
ステロイドの注射と抗VEGF抗体の注射
2つの注射のどちらかを行うか、どちらも行うかという選択肢があり、今では黄斑症がある糖尿病網膜症の患者さんに対してよく行われる治療です。
硝子体手術
硝子体出血の方や眼底に膜が張ってきてしまっている方の他、レーザー治療や注射の手術を行っても改善しない方のための手術です。
ここまで、糖尿病黄斑浮腫の手術についてお話ししてきました。しかし、手術があるから大丈夫と考えてはいけません。糖尿病黄斑浮腫は悪化させないことが何よりも大切です。
病気や治療、日常生活について不安や疑問がある場合には、医師に相談しましょう。ご自身が納得して前向きに病気と向き合えることが大切です。
この記事は2024年9月現在のものです。