熱性けいれんのお話

小児科


はじめに

熱性けいれんは、6カ月〜5歳ころのお子さんが急な発熱に伴って意識障害、けいれんを引き起こす病気です。通常38℃以上の発熱時で急激に体温が変化するときに起こり、発熱後24時間以内に起こすことが多いです。
30%近くが繰り返しますが、成長に伴い6歳前後でほとんど起こさなくなり経過は良好です。熱性けいれんは日本では小児のおよそ8%にみられます。

一部3〜5%がてんかんに移行するといわれます。

原因

発育途上の幼弱な脳神経細胞が急な体温の変化に弱いために起こります。通常38℃以上の発熱時に、意識障害やけいれんを起こします。けいれんを起こす他の病気がないことが条件になります。遺伝的な要因もあり両親に熱性けいれんがあると2〜3倍頻度が多くなるといわれます。発熱の原因としては突発性発疹、夏かぜ、インフルエンザなど急に高熱を出す疾患で多いようですが、高熱をきたす疾患はすべてけいれんのきっかけになります。

症状や起こり方

熱性けいれんイラスト発熱の初期に起こることが多く、けいれんにより発熱に気づくこともあります。基本的な症状は意識がなくなり、けいれんを起こすことです。俗に”ひきつけ”呼ばれるものですが、タイプがあります。 急に手足をかたくして突っ張る(強直性けいれん)、手足をぴくぴくさせる(間代性けいれん)、初めはかたく次第にぴくぴくする(強直・間代性けいれん)などがあり、体全体に起こったり、半身や四肢の一部に起こったりします。
また手足に力は入らずにダラーっとして意識だけがなくなることもあります。
このような”ひきつけ”のとき、目を見開いて虚空を見つめ焦点が合わなかったり、左右に偏っていたりします。また呼吸が不十分なため全身の色が悪くなり(チアノーゼ)、嘔吐・失禁を伴ったりすることもあります。けいれんは通常2〜3分でおさまりますが、20〜30分と長く続くこともあります(けいれん重積症)。おさまった後、ボーとする時期がありますが意識は元に戻ってきます。 症状や起こり方が多様なため、けいれんの持続時間が長い時や1日に何度も起きるけいれん、体の一部のみのけいれんの時には入院が必要なこともあります。

検査

熱性けいれん自体では必ずしも検査は必要ではありません。発熱の原因検索が必要です。
しかし、けいれんを起こす疾患は多数あり鑑別は必要です。例えば、髄膜炎・脳炎はけいれんや意識障害が起
こりますし、低血糖症・低カルシウム血症・先天性代謝異常症・循環器疾患なども同じくけいれん、意識障害
を起こします。これらの疾患を疑うときには血液検査、髄液検査、CT、MRI、心電図などの検査が必要になります。また、脳波検査はてんかんと区別するためにも重要な検査です。てんかんは熱がなくても起こり、発作波と呼ばれる脳波での異常がみられることが多く、抗てんかん剤での治療が必要です。

けいれんを起こしたら

けいれん時の対応が主な治療です。けいれん中や意識がないときは体や顔を横向きにして唾液、吐物などを誤嚥しないような体位にしてください。通常は数分でけいれんは自然におさまり、元に戻ります。繰り返したり、長く続いたり(5〜10 分以上)、意識がなかなか回復しないときは救急車での受診が必要です。
けいれんがおさまり意識も回復していれば、あわてて受診する必要はありません。病院では抗けいれん剤と呼ばれる薬を注射したり、座薬や点鼻薬でけいれんをとめます。必要に応じて酸素吸入や点滴をしたり、解熱剤を使ったりもします。

小児けいれん時の対応イラスト

けいれんの予防 

けいれんの予防として、ジアゼパムという座薬を使います。発熱の早期(37.5〜38℃以上で使用)に使用す
るとけいれんが予防できることが多いです。今までに2回以上のけいれんを起こしたことがあるお子さんでは予防投与を考慮します。なお、発熱時に解熱剤を使用することはけいれんの予防にはつながりません。

稀にてんかんへ移行することも

熱性けいれんは予後が良好です。年齢とともに再発率は下がり、起こりにくくなります。小学校に入学するころにはほとんどなくなりますが、時に8〜9歳になっても起こすことがあります。熱性けいれんから将来3〜5%がてんかんに移行するといわれていることから、てんかんへの移行が考えられ、脳波検査や抗てんかん剤の内服治療が必要になることがあります。

まとめ

熱性けいれんは小児では一般的な病気です。初めての場合、保護者は驚き、うろたえ、あわてることが多いで
す。あわてるのは当然です。見た目がこわいです。冷静沈着に対応できるならばいいですが、初回の場合はそ
うはいきません。そういうときは救急車を呼んで病院を受診しましょう。
何か分からないことがある時は、小児科にご相談ください。

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この記事は2019年8月現在のものです。

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