子宮頸がんの検診を必ず受けましょう~子宮頸がんは治る病気です~

産婦人科 

2016年時点で日本で“がん”になる人は年間約85万人で、そのうち約36.8万人が死亡し、約163万人が継続的な医療を受けています。また、生涯“がん”になるリスクは、男性が62%、女性は46%で、日本人の2人に1人が“がん”になり、3人に1人が“がん”で死亡するという時代になっています。本誌では、女性に発生する“がん”のうち、“子宮頸がん”を取り上げ、1人でも“子宮頸がん”では死なない時代が来ることを期待します。

子宮にできる“がん”を知っていますか?

子宮にできる“がん”は、2種類あります。下表に示しているように、“がん”ができた部位により、”子宮頸がん”と”子宮体がん”に分けられますが、日本女性は”子宮頸がん”が多く70%を占めています。

子宮にできるがんは二つある
子宮がんの種類
 子宮頸がん

 子宮体がん

・子宮頸部の上皮より発生

・日本では子宮がんの70%

40歳代に好発

・欧米よりアジア・南米に多い

・子宮体部内膜の腺組織より発生

・日本では子宮がんの30%(増加傾向にあり、浸潤がんでは頸がんとほぼ同等)

50歳代(閉経後)に好発

・日本より欧米に多い


子宮頸がんの怖さを知っていますか?

怖さの理由は、恋愛、結婚、出産という女性の人生で最も大切な時期に、”子宮頸がん”が静かに忍び寄るからです。そして、この傾向は毎年増えつつあります。

下表は日本女性40歳以下の”子宮頸がん”患者の発生率を年代ごとに示したものです。
1983年には13.6%であったのが、1994年には20.5%、2005年には24.7%と増加していますが、20歳代が1983年には1.1%であったのが2005年には3.7%と約3倍となっているのが判ると思います。

日本での若年者(40歳以下)の子宮頸がんの発生率(1-4期)
40歳以下 20歳代 30歳代
1983年

13.6%

(741/5450)

1.1% 12.5%
1994年

20.5%

(883/4302)

3.7% 16.7%
2005年

24.7%

(1241/5024)

3.7% 21%
(日産婦婦人科腫瘍委員会報告)


増加しているのは上皮内がんだけではありません。

特に30代での浸潤がんの増加が顕著です。

“子宮頸がん”が発生する原因は?

 これまで”子宮頸がん”が発生する原因は判っていませんでしたが、ドイツ人のハラルト・ツア・ハウゼン博士が、「子宮頸がんを引きおこすヒトパピローマウイルス(HPV)」を発見し、ノーベル医学・生理学賞を受賞しました。そこで初めて子宮頸がんの原因は、ほとんどの女性が感染するウイルスだったのが判りました。

“子宮頸がん”は予防できるか?(その1)

”子宮頸がん”を引きおこす原因が判ってから、子宮頸がんの一次予防としてのHPVワクチンの接種という手段を手に入れ、多くの若い女性に朗報をもたらすと考えられました。
しかし、日本ではワクチン接種後に起った種々の副反応が報告されるようになり、現在その原因について検討が行なわれている段階で、ワクチン接種の推奨は行なわれず、希望者のみとなっています。
なお、WHOのワクチンの安全性に関する諮問委員会は、ワクチン接種の積極的勧奨を差し控えている日本の状況に対して、「若い女性たちは、予防可能であるHPV関連がんの危険にさらされたままになっている。不十分なエビデンスに基く政策決定は、安全かつ効果的なワクチン使用の欠如につながり、真の被害をもたらす可能性がある」との強い見解を公表しています。これまでワクチン接種を推奨してきた日本の行政の決断が迫られているのが現状です。

“子宮頸がん”は予防できるか?(その2)

前に述べたように、ワクチン接種と定期的な検診で予防に大きな期待がもたれましたが、定期的な受診で、少なくとも”前がん病変”のレベルか、”早期がん”のレベルでの発見が可能です。その理由は、”頸がん”が発生しやすい部分はごく短時間で検査が行ないやすいということです。
また、”がん”ができやすい部位や、怪しいところを拡大して初期の病変をみつけることもできます。
早期に発見すれば子宮を摘出せずに治療をすることも可能です。しかし、進行するに従って手術も広汎になり、治療も複雑になります。

日本における子宮頸がん検診の現況は?

国別の子宮頸がん受診率を比較して示しました。先進諸国の中で圧倒的に日本の受診率が低いのが判ります。改めて日本女性に求められる課題と思います。

国別子宮頸がん検診受診率

(OECD(経済協力開発機構):Health Working Paper No.29,2007改変)


検診受診率
国名 検診受診率 国名 検診受診率
米国 82.6% デンマーク 69.4%
フランス 74.9% オーストラリア 60.5%
カナダ 72.8% ドイツ 55.9%
ノルウェー 72.5% ポーランド 49.0%
スウェーデン 72.0% 韓国 40.6%
イギリス 69.8% イタリア 36.7%
オランダ 69.6% 日本 23.7%

下表は、筑後市の受診率を示しています。若い年代の受診率が徐々に増えつつありますが、十分とはいえません。

検査も行いやすく早期発見が可能な子宮頸がんです。検診を積極的に受けましょう。


子宮がん検診受診率の推移(筑後市)

20年度

21年度

22年度

23年度

24年度

25年度

26年度

20歳代

6.0

15.8

19.7

25.9

32.0

30.5

47.7

30歳代

19.6

29.0

21.8

25.2

28.0

29.0

34.2

40歳代

16.3

22.3

24.5

26.7

29.2

29.0

24.4

50歳代

13.8

13.7

15.3

18.1

19.2

19.5

21.7

60歳代

13.3

14.7

17.0

23.2

23.5

23.0

21.5

70歳代

2.7

1.8

2.9

4.1

4.0

3.7

3.9

全体

11.0

12.7

13.3

16.2

17.2

16.9

17.8

スマートフォンからのご利用で表が全て表示されない方はこちら(子宮がん検診受診率の推移)からご覧ください。 (35KB; PDFファイル)


日本では、毎年約3,000人が子宮頸がんで亡くなられています。検査も容易で、しかも”がん”になっていく過程が最も判っている”がん”にもかかわらず死亡者数の減少がみられません。世界の先進国と自負している日本です。”子宮頸がん”では死なないという自負も持つべきではないのでしょうか。


この記事は2017年10月現在のものです。

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