大腸がん検診のすすめ
消化器内科
便潜血検査
大腸がん検診では、便潜血検査がスクリーニング検査として用いられています。これは、その名の通り肉眼では見えない便中の血液を見つける検査です。現在行なわれている免疫法は、主に下部消化管(大腸)での出血を反映しており、2日分の便で大腸がんの人が陽性である確率は83%、病変のない人が陰性である確率は96%と信頼のおける検査となっています。
しかし、便潜血検査だけでは大腸がんを見つけることはできません。便潜血陽性を指摘された人は、精密検査として下部消化管内視鏡検査(大腸カメラ)を受ける必要があります。便潜血陽性を指摘され精密検査を勧められると誰しも心中穏やかではいられませんが、放置すると便潜血検査を受けた意味がありません。
便潜血陽性とは
便潜血が陽性になる疾患は、大腸がん以外にも色々とあります。比較的若い方にも多いのが、潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患です。これらは明らかな血便として出ることも多いのですが、便潜血で発見される例もあります。大腸ポリープも便潜血の原因となります。大腸ポリープが発がんと関連しているのは周知の事実で、そのがん化率は大きさと関連しており、6mm以上の病変は内視鏡的切除が勧められます。
ただし、5mm以下の病変でも切除が望まれる場合もあります。便潜血検査は、大腸がんを発見するスクリーニングのみならず、がん化する可能性のある大腸ポリープを発見するスクリーニングにもなっています。
増えてきた大腸がん
国立がん研究センターによると、2012年に新たに診断されたがんは865,238例( 男503,970例、女361,268 例)で、大腸がんは134,575例(男77,365例、女57,210例)と男女ともに第2位です。また2014年にがんで死亡した人は368,103例(男218,397例、女149,706例)で、大腸がんでは48,485例(男26,177例、女22,308例)と男性は3位、女性は1位です。(図1・2)
大腸がん検診のすすめ
大腸がんはなぜ増えてきたのでしょうか?大腸がん発症の危険因子は、年齢(50歳以上)・大腸がんの家族歴・高カロリー摂取および肥満・過量のアルコール・喫煙があげられます。まさに、現在の生活習慣と高齢化社会が危険因子といえます。平成27年度に筑後市での住民検診受診者から算出した大腸がん検診(便潜血検査)受診率は18.4%です。また、検診で便潜血が陽性の人のうち精密検査を受けた人は69.7%でした。受診率の低さも驚きですが、30%以上の人が便潜血陽性を放置しており検診を受けた意味がありません。大腸がんは早期に発見すれば高い確率で完全に治すことができます。また、早期がんの多くは内視鏡的治療で治癒可能です。(図3・4)
ただし、他のがんと同様に大腸がんも早期のうちは無症状です。だからこそ大腸がん検診を受ける意味があります。大腸がん検診を受けることで大腸がんで死亡する確率を約60〜80%減らすことができるという調査報告もあります。
皆さん、大腸がん検診を受けましょう。そして、便潜血が陽性であれば精密検査(下部消化管内視鏡検査)を受けましょう。大腸の検査に抵抗のある方も多いと思いますが、多くの方が受けている検査であり、当院にはベテランの女性医師も常勤しておりますので、女性の方でご希望の方は女性医師による検査も可能です。また、静脈麻酔による鎮静下にて行なうこともできますので、検査に不安がある方はご相談ください。
この記事は2017年7月現在のものです。